2019/08/30 15:32



世界のセイコー腕時計の文字盤製作  
~数十ミクロンへの挑戦 ~
世界で有数の腕時計会社であるセイコーウオッチ株式会社様が世界展開されてい るプレザージュプレステージラインモデルのダイヤル(文字盤)に有田焼のしん窯が採用されました。琺瑯・漆・七宝に次ぐ新たな日本伝承の匠の技の競演です。 
日本の伝統を際立てるために、江戸時代から伝わる有田焼の淡く青みがかった光 沢の白と有田焼の柔らかい厚みを活かした立体感で磁器特有の優美な表情を実現ことになった。そのため、型を使った圧力鋳込みによる成型で極力真円に近づけることになり、今まで経験したことのない高精度の技術が求められました。 世界で稀な磁器製文字盤を開発するために、磁器の魅力とダイヤルとしての強度 を両立させる、という難しい課題を佐賀県窯業技術センターで 新しく開発された高強度の磁器素材を用いることになり、佐賀県窯業技術センターの多大なる技術支援を受けて開発に着手しました。
(注)佐賀県県有特許特願2016-215922号 (強化磁器)を用いてます。

しん窯の文字盤が採用された機械式時計「セイコー プレザージュ」プレステージラインの有田焼ダイヤルモデル(左が多針モデル)

有田焼の未知の世界へ
~ 職人の技術力と忍耐力で実現 ~
有田焼の長い歴史の中でも伝統美を活かしつつ精密機械に数十ミクロン単位の精密さで組み込まれる有田焼は製造されたことはないと思われる。まさに現代の芸 術品だと言えます。私達しん窯の職人は、その製作工程でいくつも難題に直面し、職人魂で克服してきました 。
その工程は、陶土の泥漿(でいしょう)調合、鋳込み、仕上げという工程を経るが、磁器の厚みを活かしたダイヤル上面の大きなカーブ、多針モデルにおいては サブダイヤルに柔らかなくぼみを与えることで、磁器特有の優美な表情を実現し、仕上げ段階では江戸時代初期の有田焼に用いられていた柞灰(いすばい)釉の淡く青みがかった白を再現しました。



品質と納期を厳守するために、丁寧でかつスピードのある手作業でやり遂げました。特に、ダイヤルの寸法を時計枠の範囲内におさめるのが難しく、また、釉が けの厚みと色を合わせるのも難しく、圧力鋳込みの脱型は非常に神経を使いました。エアーを一箇所に当て過ぎると歪み、弱く当てると脱型できないこともあります。ダイヤル仕上げでは厚さ約1ミリの薄さのため、割れ易く、握る時に一点 に力がかからぬように用心深く集中して作業を繰り返していきました。有田焼ダ イヤルは目に近いところで使用されるため、製品に傷や異物が無いか、専用のメガネをかけて、これまで以上に慎重に検品を心がけました。



今回のセイコー・プロジェクトで多くのことを学ぶことが出来ました。 先ず、美的感覚を持った精密製品は職人の技によって実現できるものだと 確認できました。そして、迷いがあればどんな小さな事でも必ず相談して行動し 、 「報連相」を徹底すること。最終納期に向けて、生産計画を立て、それにあわせて生産実績表を作成して着実に生産すること。 一日の目標を明確にして取り組んだことなど、日頃の有田焼では余り行われない生産管理を学びました。

しん窯の未来への挑戦  
~ 職人技からQCへ ~
今回のプロジェクトに関わって従来の伝統産業からの脱皮が急務だと痛感しました。それは、商品開発・製造から販売までの一貫したマーケティング戦略に基づ いた全体の工程管理であり、お互いをレスペクトしてチーム一丸となってゴール をシェアする綿密な意思疎通、そして、何よりも明るく ポジティブ・シンキングすることです。今後のしん窯の未来に大きな転換期を与えて頂きました。有田焼 にも日本が世界一の製造になったQC(品質管理)を導入する時期が訪れたと思います。
セイコーウオッチの皆様、佐賀県窯業技術センターの皆様、そして、ご協力頂いた多くの関係者の皆様に心から感謝申し上げると共に、今回の商品が世界中でたくさん売れることを祈願いたします。